ヨーロッパでは紅茶や緑茶に花の香りや花をブレンドしたり、
果実の香りをつけた「フレーバードティー」が、
北欧・ドイツ・オランダ・そしてフランスなどの国々で馴染みの深いお茶です。
また、ミルクティーが主流の文化だったイギリスでも、
有名な百貨店や紅茶専門店でフレーバードティーが展開されています。
イギリスの首相チャールズ アールグレイ伯爵が好んだ「アールグレイ」は、
世界でもっとも有名なフレーバードティーではないでしょうか?
フレーバードティーのこと
世界には、さまざまなお茶があります。
中でも「お花」そのものをお茶としているものや、お花やフルーツの香りを愉しむステキな習慣
を日常にしている国もあります。
例えば中国では「花茶」といわれる工芸茶や「中国茶」の中のジャスミンティー。
早朝に摘んだいちばん香りの良いお花と茶葉を層にして、お茶にジャスミンの香りを移すという
非常に手間のかかる方法で作られる香り高いお茶です。
アジアでは、また、ベトナムの蓮の花の香りをつけたお茶も有名です。
そして、香りの文化が発達した歴史のあるフランスでは、
茶葉の中に花や実、ハーブなどを
ブレンドし、香りづけした「フレーバードティー」が主流で、
フランス紅茶=フレーバードティー
というイメージが大きいと思います
香りの歴史
香りの歴史は遡ると紀元前15世紀。
メソポタミア文明・古代エジプト文明が栄えていた時代です。
どの文明においても香りは、
パフューム(perfume)の語源「per-fumum」(煙をとおして・煙によって)が示すように、
宗教と深い関わりがありました。香りは、生贄を神に捧げる儀式やミイラ作りにも使われていたのです。
そこから、いろいろな文明で独自の発展を遂げ、
ヨーロッパでは16世紀には南フランスに香料の街「グラース」が誕生しました。
この街は「香りのメッカ」と呼ばれ、
世界中の名だたる香水メーカーの調香師(香りを調合し作る人)のほとんどがこの地で勉強をしたとされています。
16世紀初頭に羊の皮なめし業が盛んだったグラース。香料の街として有名になったきっかけは、イタリア・メディチ家のカトリーヌ・ド・メディシスがフランス王アンリ2世に嫁ぐ際に、さまざまな花やハーブが咲き乱れるグラースの風景や、皮なめしに使われていた精油を目に留めたことから始まります。カトリーヌは従者に香料の研究所をその地に作らせました。18世紀には、パリで香水の販売店が初めてオープンし、19世紀には、上流階級の間で需要が増大します。
フランス独自の
フレーバーティー文化
現在では、独創的で創作力のあるフランスが、香水王国・香りの文化大国として
香りに関するさまざまな情報を世界に発信し続けています。
その香りの文化と、フランス特有のアート・絵画・美術などの視覚的なものや、
ハイレベルでおしゃれなイメージの紅茶文化が融合し、
フランス独自のフレーバーティーの文化が確立されたのではないでしょうか?
フランスには、原茶(香りを付けていない紅茶)もありますし、
日本茶も流行しているし、中国茶もあります。
しかし、フランスならではの感性でブレンドしたフレーバードティーは、飲んで美味しく
視覚的にもほんとうに美しく、バランス感覚の集結したものだと思います。
また、飲みものとしては、どんなに見た目が綺麗でも
茶葉の味わいとフレーバーのバランスが悪ければ、
フレーバードティーとしては完成といえません。
ティーブレンダーは、ベースになる茶葉の本質やどんな特徴があるのかを熟知し、当然のことながら生産地の茶園に自ら足を運び、納得のいくものをチョイスするため一年の半分以上は世界の茶園を飛び回っています。
また、香り付けであるフレーバー(香料)も1種類だけではなく、何種類もブレンドし、
イメージの香りを作った上でブレンドします。
ブレンドするハーブ・花や実なども色彩のバランスを取りながら
味を邪魔せず・引き立て・イメージ通りのものになるまで何度も試します。
国が変わると好みも変わり、香り付けのバランスも変わる。
クライアントの要求と自分の美意識のすり合わせが最も作り手の苦労するところです。
まるでアートのように私たちの目を楽しませてくれて、香りで癒される「フレーバーティー」。
ブレンダーの苦労と完璧な感性により、作り上げられる世界です。
五感を研ぎ澄まし、全身で感じてください。
これからフレーバードティーを召し上がる時、どうぞ一度白い器に広げて見てください。
茶葉の中に花やハーブ・実がバランスよく配置された姿に目を奪われるはずです。
香りには直接脳に届く癒しの作用もあります。
温かい紅茶で身体を温めながら、疲れた心を香りでリラックスさせてあげてください。
みなさんの日常の暮らしに「香りのお茶」「フレーバードティー」が
彩りを与えてくれますように。